従来規格11nでは「チャネルボンディング」「MIMO」といった技術によって最大600Mbps(規格値)の速度を実現していました。 最新規格11acでは、こうした技術をさらに発展させて、規格値で最大6.9ギガbpsもの高速化が可能とされています。比較すると約11.5倍も高速に! ここでは高速通信のカギとなる11acのキーテクノロジーをご紹介します。
チャネルボンディングは、複数のチャネルを束ねて周波数幅を広げる技術。道路に置き換えると、11a/gでは1車線だったものが、11nでは、隣り合った2つのチャネルをあわせて2車線に。11acでは、さらにチャネルを束ねて4車線となり、11nより高速な通信が可能となります。
MIMOは、複数のアンテナを使って通信を高速化する技術。アンテナを目的地へのルートに置き換えると、11nでは、最大4つのルートで速度を得ていたものが、11acでは、さらに倍の最大8つのルートを使えるようになり、より高速な通信が可能となります。
変調とは電波を信号に乗せること。1回の運搬で扱えるデータ量が増えれば、完了までの時間も短縮されるトラックの積載量のようなイメージです。信号1単位で送れる情報密度は、11nでは6ビット(64QAM)でしたが、11acではさらに高度な8ビット(256QAM)送信も可能です。
1度に転送可能なデータ量が増加します。トラックの荷台を拡張したようなイメージです。11acでは、11nと比べてフレームサイズが16倍に拡大。効率的に多くのパケットを送れることから、データの送信や応答確認に必要な待ち時間が短縮され、高速化を実現できます。
11acの技術革新の中で、最も特徴的なのが「MU-MIMO」と呼ばれる同時通信の技術です。
無線LANの通信を細かな時間軸で見ていくと、従来の「SUーMIMO」は時分割多重で、実は送信側と受信側の通信は“1対1”で行われており、端末が増えるほど速度が低下していることがわかります。
進化した「MUーMIMO」は、特定の端末に向けて電波を発信する「ビームフォーミング」技術を使った機能です。「ビームフォーミング」と融合することで、電波干渉が起きないよう位相をずらして複数の信号波を送る「空間多重」による通信を実現。複数の端末に別々のデータを送る“1対多”の同時通信を可能にしました。
通常は全方位へ電波を送信するのに対して、ビームフォーミング対応の端末を自動で検出※し、集中的に電波を照射。よりつながりやすく実効速度がアップします。
端末1台1台との間を順次切り替えながら「時分割多重」で通信するため、端末の台数が増えるほど通信速度が低下していました。
電波干渉が起きないよう位相をずらして複数の信号波をビームフォーミングで送信。「空間多重」によって、複数台の同時通信を可能にします。